今回のコラムでは、新規事業を考えている経営者の方や、独立を目指す個人事業主の方に向けて、フランチャイズ事業で失敗しないための「フランチャイズ本部の見極め方」を解説していきます。
フランチャイズ事業を選ぶ3つのポイント

今ではフランチャイズ事業を紹介するサイトでは、400を超えるフランチャイズブランドが掲載されており、選択肢が非常に多くなっています。勢いのあるブランドやトレンド性の高い事業もあり、どれも魅力的に見え、どのフランチャイズ事業が良いのか選択が難しくなっています。
ここでは、フランチャイズ事業選びで失敗しないための3つのポイントをお伝えします。
・ビジネスモデル
・店舗数と継続年数
・フランチャイズ本部
ビジネスモデル
「誰に」「何を」「どのように」提供するのか、興味あるフランチャイズに加盟する前に理解することが重要です。
単に市場がこれから成長していくから加盟すれば良い、という安易な判断は危険です。
他社と何が違うのか、強み弱みは何かをきちんと把握する必要があります。
例えば、リユース買取事業であれば、「買取のノウハウ」に強みがあるのか、「販売チャネルが多い」のか、「自社で買取から販売までのシステムを持っている」のかなど、そのブランド独自の強みをしっかりと理解することが大切です。
店舗数と継続年数
フランチャイズは1000店舗を超えるフランチャイズもあれば、まだ数店舗の小規模なフランチャイズもあります。
店舗数が多いということは、それだけデータや実績があり、信頼性は高まりますが、初期費用が高かったり、出店立地が限られるデメリットもあります。
一方で、アーリーステージ(30店舗未満)のフランチャイズであれば、加盟者にとってはチャンスとなる場合もあります。
ただし、店舗数の「増え方のパターン」も確認が必要です。
例えば5年で30店舗あるフランチャイズの増え方
①毎年5〜6店舗増え5年で30店舗→加盟店の経営がうまく行き堅調に伸びている
②最初の1〜2年で30店舗を出店し、その後増店なし→加盟店があまりうまく行っていない可能性がある
③50店舗あったが30店舗まで減少→加盟店がうまくいかず何か問題がある
店舗数が多い=良いというわけではなく、増店の流れや背景を理解することが大切です。
フランチャイズ本部
フランチャイズ本部のサポート体制が整っているかどうかは、加盟後の経営に直結します。
サポートは「開業前」と「開業後」の両方が重要ですが、特に経営面での継続的な支援があるかを確認しましょう。
フランチャイズ事業は、5年・10年・20年と長期的に続けていくものです。担当者との相性や、本部との信頼関係を築けるかも重要なチェックポイントです。
フランチャイズ事業を検討している方の多くは、「やりたいこと」よりも、「しっかりと儲かるかどうか」という点を重視して考えられていると思います。
だからこそ、5年、10年、20年と長期のビジネスパートナーになる本部の選定は、成功に向けて最も重要な要素です。
フランチャイズ本部選びのポイント

次に、フランチャイズ本部選びのポイントを見ていきましょう。
ブランド数
フランチャイズ本部によっては複数ブランドを持っている企業もあります。
例えば、株式会社ガーデンのようにうどん、ラーメン、寿司と飲食事業を中心に複数ブランドを展開しているケースです。
それぞれのブランドの店舗数や加盟状況など調査は必要になりますが、ブランド数が多いということは、それだけフランチャイズ運営に関するノウハウも蓄積されている可能性があります。
経営のサポートが受けられるか
フランチャイズ本部の経営サポートは受けることができるか、これはすでにあるFC店舗を訪問したり、店舗の評価や加盟者に話を聞くことで判断することができます。
店舗数だけ増えていて、本部サポートができていないフランチャイズもありますので、店舗数があるから安全、安心という考えはしないようにしましょう。
他事業を展開しているか
フランチャイズ事業以外にも他の事業をしているかどうかは、本部を見極める重要なポイントの1つです。
FC事業だけに集中している企業もサポート面を考えると安心感はありますが、他事業を展開していることは、経営ノウハウを持っていて信頼にもつながります。
もう1つの点は、「加盟金ビジネス」でない可能性が高いということです。
(加盟金ビジネスとは、加盟店の継続的な収益やサポートを重視せず、加盟金を主たる収入源として、新規加盟店を増やすことに注力していることを言います。)
他事業を展開し経営面で安定していれば、加盟店のサポートをすることができ、加盟店の経営も安定させることができます。
フランチャイズ本部の選びで失敗するケース

フランチャイズは「成功している事業に参加できる」強みがありますが、「加盟すれば成功する」と思い込むのは非常に危険です。
以下に失敗しやすい3つのパターンをご紹介します。
経営者としての意識がない
「加盟したら成功する」という甘い考えは持たないようにしましょう。
「自分が経営する」という認識をしっかりと持ち、自ら事業を動かす意識を持つことで、フランチャイズ本部を見極めることができます。
流行りやトレンドに惑わされる
急成長しているブランドは、加盟店の経営状況などの情報が少なく、正確な判断が難しい場合があります。
フランチャイズに特化したメディアには、雑誌『ビジネスチャンス』や情報サイト『フランチャイズの窓口』『アントレ』などがあり、そこに大きく取り上げられているブランドを見ると、つい良い印象を受けてしまうことがあります。
しかし後述の事例でも紹介しますが、勢いに乗って加盟したものの、本部のサポートが弱く、結果的に経営が立ち行かなくなって廃業に至る、そんな一過性のフランチャイズも少なくありません。
トレンドに流されず、「なぜ今、そのブランドが成功しているのか」を冷静に分析する姿勢が重要です。
加盟のしやすさで選ぶ
初期費用が少なかったり、ロイヤリティが低かったりするフランチャイズは、加盟のハードルが低く、一見すると魅力的に感じられます。
費用負担が少ないことで早く事業を始められたり、月々のロイヤリティが低い分、利益が手元に残りやすいと考える方も多いでしょう。
しかし、加盟金やロイヤリティが低いということは、本部の収益も限られるため、営業活動に時間を割かざるを得ず、加盟店へのサポートに十分なリソースを割けなくなる可能性があります。
また、加盟のしやすさから短期間で店舗数が急増すると、本部が対応しきれず、サポート体制が崩れるリスクもあります。
コスト面の条件だけで判断するのではなく、長期的に安定して支援を受けられる体制が整っているかも含めて、本部を慎重に見極めましょう。
【事例】トレンドやブームに乗って加盟した失敗例 ― フランチャイズ本部を見極める力が問われる

ここまでフランチャイズ選びで「本部の見極め」が重要であることを解説してきましたが、実際に、一時的なブームに乗って加盟し、失敗した事例も存在します。
それは、高級食パンブームの火付け役となった「乃が美」です。
2013年に創業し、5年で全都道府県に出店する勢いを見せた「乃が美」は、2020年には約240店舗と急速に拡大しました。
しかし、2023年には閉店ラッシュとなりフランチャイズ店舗は約100店舗まで減少する、一過性のブームとなりました。
「店舗数が増えている=成功しているブランド」と錯覚してしまうのは、フランチャイズ業界ではよくある話です。
実際、メディアに取り上げられている、SNSで話題になっているというだけで「安心感」や「成功確率の高さ」を感じ、十分な調査や戦略を持たずに加盟してしまうケースも少なくありません。
しかし、こういうときこそ、一度立ち止まり、冷静に分析することでフランチャイズ本部の実態を把握することができます。
1.なぜ拡大できているのか(加盟店が増えている理由)
2.本部のサポートや経営力の実態
3.加盟金の金額は適切か?加盟金ビジネスではないか?
例えば、なぜ店舗数を増やせているのかを冷静に考える必要があります。
他社には真似できない、家庭では作れないお客様にとって特別な商品なのか?リピートされる理由があるのか?また、高級食パンの価格帯は、地域によってはリピートが難しいのではないか?など推測することができます。
さらに、全都道府県に展開しているようであれば、その分の経営ノウハウが蓄積されているはずです。
それらを本部だけでなくフランチャイズオーナーに確認することで、拡大している要因、本部のサポート力(経営力)があるのかリアルな情報が得られます。
「乃が美」の場合、加盟金は1000万円と非常に高額でした。
多くの人は「これだけ取るのだから、きっと儲かるビジネスに違いない」と期待したことでしょう。
しかし、ここでも冷静な視点が必要です。
フランチャイズ本部が加盟店を募る目的は、スピーディーに市場シェアを拡大し、全体として利益を上げることです。
となると、加盟店をスピーディーに増やそうと考えた時には1000万円という加盟金は高額になります。
経営に自信があり、加盟店を儲けさせるノウハウがあるのであれば、加盟金を下げ、加盟店を早急に増やし、加盟店にしっかり儲けてもらいロイヤリティを得るという方がビジネスチャンスが広がります。
しかし、そうしないということは、フランチャイズの権利を売ること自体がビジネスになっている。
つまり、加盟金ビジネスになっているのでは?と、冷静にフランチャイズ本部を見ることができます。
ブームや話題性、店舗数の多さに惑わされず、本部の中身を見極める目を持つことが、フランチャイズ成功の第一歩です。
「なぜ儲かるのか」「持続性があるのか」「本部は信頼できるのか」という視点を持ちフランチャイズ本部を見極めましょう。
まずはフランチャイズ本部と話をしてみよう

ここまでフランチャイズ事業選びで失敗しないために、フランチャイズ本部を見極めることが重要ということをお伝えしてきました。
流行りに惑わされず情報をしっかり集め、信頼できる本部であるかどうか、加盟店の経営は順調か、サポート体制は整っているのか、経営者として面談で確認するようにしましょう。