「せっかく軌道に乗ってきたのに、すぐ近くに似たような店ができた……」
飲食店経営において、これほど胃が痛くなる状況はありません。
特に「夜アイス」や「スイーツ」のようなトレンド性の高い業態では、後出しの競合店が資本力を武器に近隣へ進出してくる、いわゆる「カニバリ(共食い)」のリスクが常に付きまといます。
しかし、2026年現在の成熟した市場において、競合店の出現は必ずしも「ピンチ」ではありません。むしろ、自店のファンを強固にし、ブランドの輪郭をはっきりさせる絶好の機会です。
本コラムでは、近くに競合店ができた際、絶対にやってはいけない「安売り」の罠と、お客様の浮気を防ぐ最強の防波堤となる「体験価値」の差別化戦略について解説します。
1. 最大の罠:競合を意識した「安売り」は自滅への道

競合店がオープンし、一時的に客足がそちらへ流れると、多くの店主が焦って「期間限定セール」や「値下げ」に踏み切ります。
しかし、これはワンオペや小規模店にとって、最も選んではいけない戦略です。
・資本力には勝てない: もし競合が大手資本であれば、価格競争で勝てる見込みはありません。彼らは赤字を出してでも市場を独占しようとします。
・ブランド価値の毀損: 一度下げた価格を戻すのは至難の業です。また、「安さ」で集まったお客様は、さらに安い店ができれば即座にそちらへ去っていきます。
・利益率の悪化: 以前のコラムで触れた通り、小規模店の強みは「高利益率」にあります。客数を稼ぐために利益を削れば、忙しいだけで手元にお金が残らない、負のスパイラルに陥ります。
対策の基本は「戦う土俵を変えること」です。 価格ではなく、他では得られない「体験」で勝負する。これこそが生き残りの鉄則です。
2. 「モノ」ではなく「コト」で差別化する:Cream Festの体験戦略

2026年の消費者は、「美味しいアイス」だけならコンビニでも買えることを知っています。彼らが専門店に求めているのは、お腹を満たすことではなく、「自分の感性が満たされる体験」です。
「カスタマイズ」がもたらす所有感
Cream Festの強みは、トッピングを組み合わせる「カスタマイズ体験」にあります。
・参加型エンターテインメント: 決められたメニューを選ぶだけでなく、「自分だけのオリジナル」を作るプロセスそのものが楽しさになります。
・失敗のない贅沢: スタッフが目の前で、顧客が選んだこだわりのトッピングを丁寧に盛り付ける。この「自分のために作られている時間」は、規格化された競合店では提供できない価値です。
人は、自分が意思決定に関わったものに対して、強い愛着(所有感)を感じます。この愛着こそが、他店への浮気を防ぐ最強の心理的障壁となります。
3. 接客は「防波堤」である:ワンオペだからできる関係性構築

「近くの競合店の方が、内装が豪華でスタッフも多い」――それでも、お客様があなたのお店を選び続ける理由。それは、「あなた(もしくは、スタッフさん)という人間がいるから」です。
サービスではなく「コミュニケーション」の価値
ワンオペレーションは、効率化だけが目的ではありません。「店主と顧客が直接つながる」ための仕組みでもあります。
・認知の喜び: 「いつもありがとうございます」「今日はこのトッピングがおすすめですよ」といった一言。自分のことを覚えてくれている店には、人は何度でも通いたくなります。
・ブランドの擬人化: 競合店がマニュアル通りの接客をする中、店主の想いやこだわりが伝わる会話があれば、お店は単なる「飲食店」から「応援したい存在」へと変わります。
「美味しいアイス」は真似できても、「あなたとの会話」は競合店には絶対に真似できません。
4. 戦略的比較:価格競争 vs 体験価値

競合店が現れた際の、二つの戦略の差を表で比較してみましょう。
| 項目 | 価格競争戦略(失敗しやすい) | 体験価値戦略(Cream Fest) |
| 主な対策 | 値下げ、クーポン配布 | 限定トッピング、接客の強化 |
| ターゲット | 安さを求める浮気層 | 価値を認めるファン・リピーター |
| 顧客心理 | 「あっちの方が安いから行く」 | 「この体験はここでしかできない」 |
| 利益構造 | 売上が増えても利益は減る | 高単価・高利益を維持できる |
| 長期的な結果 | 消耗戦の末に廃業 | 地域一番の「愛される店」に |
5. 競合店を「地域の盛り上げ役」に変えるマインドセット

最後に大切なのは、競合店を敵視しすぎないことです。
近くに同業態の店ができるということは、そのエリア全体が「アイスクリームを食べに行く場所」として認知されるチャンスでもあります。
・ハシゴ需要の創出: 競合店に行ったお客様が「あっちも行ってみよう」と興味を持つきっかけになります。
・自店の個性を研ぎ澄ます: 競合店があるからこそ、「うちはよりリッチな素材にこだわろう」「うちはより会話を大切にしよう」と、自店の強みが明確になります。
競合店が「効率」や「安さ」を追求するなら、Cream Festは徹底的に「リッチな体験」と「パーソナルな繋がり」を追求する。この軸さえぶれなければ、カニバリに怯える必要はありません。
実はCream Festの住之江本店では、半径1キロ以内に過去数年で3店舗競合店と言えるお店ができました。
そのたびに来店数は増え、そして、今ではそのうち競合だった2店舗はなくなっています。そしてお客様の数はCream Festのみ増え続けています。
このように、そのエリア全体が「ソフトクリームのお店に行く」という習慣が競合店によって作られ、そして「Cream Festというお店があるんだ」と知るきっかけになり、リピーターとして定着するようになったというわけです。
結論:選ばれ続ける理由は「あなた」の中にある

競合店の出現は、あなたの経営の健康診断です。
もし、お客様が価格だけで動いてしまうなら、それはまだ「体験価値」が十分に伝わっていない証拠かもしれません。
「ここでしか味わえない一杯」と「あなたに会いに来る理由」を作る。
2026年の過酷な市場で、最後まで生き残り、笑い続けるのは、目の前のお客様一人ひとりと真摯に向き合い、独自の「体験」を提供し続けるお店です。