開業費用を抑える「居抜き物件」。元タピオカ店やカフェ跡地はソフトクリーム店の開業に使えるのか?
電気容量(動力200V)など、表面には見えない「隠れたリスク」と、失敗しない物件選びの極意を解説します。
はじめに:「宝の山」か「安物買いの銭失い」か

「開業資金を抑えたいなら、居抜き物件を狙え」
これは店舗ビジネスの鉄則としてよく語られます。
前のテナントが残した内装、厨房機器、空調設備をそのまま引き継ぐことで、数百万円単位のコストカットが可能になるからです。
特に2025年現在、数年前に乱立した「タピオカ専門店」や「高級食パン店」、そして淘汰の始まった「カフェ」の跡地が不動産市場に多く出回っています。
一見すると、これらはスイーツ店であるソフトクリーム屋、ジェラート屋との親和性が高く、即戦力の「宝の山」に見えるかもしれません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「ソフトクリーム屋として使える物件」と「カフェとして使える物件」は、似て非なるものだからです。
安易に契約した結果、「電気が足りなくてマシンが動かない」「排水管が詰まって営業停止」といったトラブルに見舞われ、結局スケルトン(何もない状態)から作るより高くついた…という事例は後を絶ちません。
本記事では、元タピオカ店やカフェの居抜き物件が、果たしてCream Festの開業に適しているのか。
設備やインフラの観点から徹底的に解剖し、賢い物件選びの基準をお伝えします。
居抜き物件の「表」のメリットと「裏」のデメリット

まずは、居抜き物件全般の基本的なメリットとデメリットを整理しましょう。
メリット:スピードとコスト
1.初期投資の圧縮: エアコン、トイレ、給排水管など、新たに設置すると高額なインフラが既に存在するため、内装工事費を通常の1/2〜1/3に抑えられる可能性があります 。
2.開業スピード: ゼロから図面を引いて工事をする場合、契約からオープンまで2〜3ヶ月かかりますが、居抜きなら最短1ヶ月程度でのスピード開業が可能です。家賃の空払い期間(カラ家賃)を減らせるのも大きな利点です。
デメリット:制約と隠れた瑕疵(かし)
1.レイアウトの制約: 厨房の位置やトイレの場所が決まっているため、多くのFCが推奨する「高効率なワンオペ動線」を100%再現できない場合があります。
2.「負の遺産」の継承: 「あそこはすぐ潰れた店だ」という地域のネガティブなイメージを引き継いでしまうリスクがあります。
3.設備の老朽化: 「エアコン完備」とあっても、実は10年以上前のもので、入居後すぐに故障し、自費で交換になるケースも多々あります。
検証!「元タピオカ店」は使えるのか?

5坪〜10坪のコンパクトな物件が多いタピオカ店跡地。広さだけで見れば、テイクアウト専門のソフトクリーム屋には最適に見えます。しかし、設備面では注意が必要です。
1. 【電気】致命的な「動力(3相200V)」不足
これが最大の落とし穴です。
タピオカ店で使用する機器(シーラー機、小型冷蔵庫)は、家庭用電源(単相100V)で動くものがほとんどです。
一方、Cream Festで使用する業務用ソフトクリームサーバーは、非常にパワーが必要なため、「3相200V(動力)」という特別な電源を必要とします。
元タピオカ店には、この「動力」が引き込まれていないケースが多くあります。
もし引き込まれていない場合、新たに電柱から店内にケーブルを引き込む工事が必要となり、建物の構造によって追加費用が発生するか、最悪の場合は大家さんの許可が下りずに工事不可(=開業不可)となります。
2. 【排水】「乳脂肪分」による詰まりのリスク
タピオカドリンクの主な汚れは「糖分」と「デンプン」ですが、ソフトクリームは「乳脂肪」です。
脂肪分は冷えると固まり、排水管を詰まらせる原因になります。そのため、古いシンクや排水管の場合、詰まってしまうことがあります。
ただ、床を掘り返してグリストラップを埋設するなどの高額工事は油物をメインに取り扱う飲食店として原則不要ですが、既存の設備が壊れていないか、そのまま使えるかはプロによる厳密なチェックが必要です。
3. 結論:タピオカ跡地は「電気」を見ろ!
広さは魅力ですが、できる限り低予算でスタートしたい場合は、電気容量と許可が出るのかは確認しましょう。
「タピオカ屋だったから同じスイーツ屋なら大丈夫だろう」という素人判断は禁物です。
検証!「元カフェ・喫茶店」は使えるのか?

次に、軽食やコーヒーを提供していたカフェの跡地です。
1. 【ガス】不要なハイスペック設備
カフェや喫茶店には、パスタを茹でたりランチを作るための「ガス設備」や「重飲食用の排気ダクト」が整っていることが多いです。
しかし、ほとんどのソフトクリーム店やジェラート店はガスを一切使いません。
本来不要な、使わない巨大なレンジフードが厨房を圧迫し、レイアウトの邪魔になることがあります。
撤去するにも費用がかかるため、「オーバースペック(過剰設備)」がコスト増の要因になるのです。
2. 【広さ】客席スペースが広すぎる
カフェは「滞在」でお金をもらうビジネスモデルのため、20坪〜30坪の広さがある物件が多いです。
テイクアウト主体を考える場合、広すぎる客席は「死にスペース」です。
家賃は坪数に比例するため、使わないスペースのために毎月高い家賃を払うことになります。
また、広い店内はワンオペでの目配りが難しく、防犯上のリスクも高まります。
3. 結論:カフェ跡地は経営サポートがあるならアリ
そのまま借りると広すぎますが、店舗の造りや、営業スタイル、そして経営サポートがあるならアリでしょう。
ただし広い店舗は家賃も高くなるため覚悟を持つことが重要です。
成功する居抜き物件選び「3つのチェックポイント」

では、ソフトクリーム屋を開業するにあたり、どのような居抜き物件を狙えばよいのでしょうか。
失敗しないための具体的なチェックポイントを3つ挙げます。
①「スケルトン戻し」寸前の物件を狙う
前のテナントが退去する直前、「原状回復(スケルトンに戻す工事)」をする前のタイミングで交渉できればベストです。
前のテナントにとっても、解体費用が浮くため、厨房機器やエアコンを無償(残置物扱い)で譲ってくれる可能性が高まります。これを「造作譲渡(ぞうさくじょうと)」と言います。
不動産会社に「解体前の物件が出たらすぐに教えてほしい」と伝えておくのがコツです。
②「防水」の状態を確認する
ほとんどのソフトクリーム店は、毎日の清掃で水を流します。
カフェなどの居抜き物件の場合、床が「乾式(水を流せない仕様)」になっていることがあります。
これを「湿式(水を流せる仕様)」に変えるには大規模な防水工事が必要です。
「床に水を撒いて掃除ができるか?」は、衛生管理と清掃効率に関わる重要なポイントです。
③「看板」の視認性と書き換えコスト
居抜き物件の看板スペースが、前の店の形に特化しすぎていると、デザインを変更するのに高額な費用がかかる場合があります。
既存の看板枠を流用できるか、あるいはカッティングシートの上貼りで済むかなど、「外装のリニューアルコスト」も見積もりに含めて検討しましょう。
Cream Fest流「居抜きリノベーション」の魔法

居抜き物件は「前の店の霊(イメージ)」が憑いていると言われます。
「あ、ここ前もタピオカ屋だったよね」と言われないためには、徹底的なイメージチェンジが必要です。
Cream Festでは、低予算で劇的に印象を変えるリノベーションのノウハウを持っています。
・クロスの魔術: 壁紙を全面張り替えるだけで、古臭い喫茶店がZ世代向けのポップな空間に生まれ変わります。
・照明の変更: 蛍光灯を撤去し、スポットライトやペンダントライトに変更するだけで、商品の「映え」度合いが段違いになります。
・ファサード(入口)の一点突破: 内装は既存を活かしつつ、お客様が触れる入口周りだけにお金をかけることで、ブランドの新鮮さを演出します。
これらは、設計施工のプロである本部が、物件ごとに最適なプランを提案します。
結論:物件は「見た目」ではなく「血管(インフラ)」で見よ

居抜き物件は、うまく使えば開業資金を300万円以下に抑える強力な武器になります。
しかし、その判断基準は「内装がきれいか」ではありません。
「電気が通るか」「水が流れるか」「換気ができるか」という、店舗の血管にあたるインフラ部分です。
素人目には判断が難しいこのインフラチェックを、Cream Fest本部は物件契約前の段階から無料で行っています。
「家賃が安いから」と飛びつく前に、まずは私たちにご相談ください。
その物件が「金の卵」なのか、それとも「時限爆弾」なのか。プロの目で診断させていただきます。
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